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恋愛に不器用な女性がクリスマスイブに出した答え

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恋愛に不器用な女性がクリスマスイブに出した答え

〜フラペのエッセイ〜

著:フラペ

 

Part 1

向池野 大将(むけのひろまさ) は地方大学の文系学部に通う1年生。

どこにでもいる、少し真面目で、少し遊ぶ、一浪して入学した20歳男子。

 

大将が恋愛感情を抱くことになる女性は、同じ学部に通う2年生の藍浦 稀理絵(あいうらきりえ)。

稀理絵は連絡不精な性格だが、気を許した人には屈託のない笑顔を見せる。

そんなところに大将は惹かれる。

 

 

11月のある日、大将はサークルの飲み会に顔を出していた。

「アウトドアキャンプ」という、それらしい名をつけて活動しているサークルだったが、実際にキャンプをしているところは一度も見たことがない。

いわゆる「飲みサー」に大将は所属していた。

 

いつもどおり、部員たちが酔い始めると、各々席を立ち上がり店内を移動し始めた。

一人が動いて穴が空けば、その席を誰かが詰めていく。

 

そうして席を変わっていくうちに、稀理絵と大将はテーブルを挟んで向かい合っていた。

大将が稀理絵と正対したのは、このときが初めてだった。

 

大将は、稀理絵が同じ学部で同じ授業を履修していることを知っていた。

ただ、稀理絵の顔を見ることができなかった。

目前に自分のタイプが現れたとき、人は相手を直視てきないことをこの時、思い知った。

 

「お疲れ様」

と言いながら、稀理絵はグラスを前に出してきた。

大将はグラスを持ってそれに応じる。

「コ…ツン」

手に力が入っていたのか、グラスからはぎこちない音が聞こえた。

 

2,3秒の間のあと、稀理絵は学生らしい口ぶりで話を切り出す。

「大将君って彼女はいるの?」

 

大将は苦笑しながら、投げられたボールを返す。

「いないの知ってますよね?(笑)稀理絵さんこそ、サークルの先輩と付き合ってるらしいですけど、どうなんですか?」

 

すぐに、返事があった。

「最近…別れたんだよね…」

 

大将は慌てた様子で頭を下げる。

「あ…知らなくて。すいません…」

 

空気を察した稀理絵は、

「いやいや、いいよいいよ知らなくて。それよりさ!学部も歳も一緒だしさ、ここ終わったら何人かで宅飲みしない?というかタメ語で話そうよ!」

 

ノリの良さに大将は狼狽したが、これとない機会に学部生の先輩たちと交友を広げるのもいいと思い、快諾した。

 

稀理絵が他の部員に名前を呼ばれて席を立ったあとも、別の部員と当たり触りのない話をしたが、二次会への緊張で話が頭に入ってこなかった。

 

 

二次会の場所は同じ学部の男性宅1LDKらしかった。

一人暮らしにしてはリビングが広く、6人で二次会をするには十分すぎる部屋だ。

 

ただ、部屋に着く頃には大将、稀理絵、稀理絵の友人女性以外、残り3人は家主を含め、もうすでに追加で酒を飲める状態ではない様子が見て取れた。

「せっかくだから、残りの3人だけでも楽しもう!」ということになったので、近くのコンビニで二次会の買い出しをすることに。

潰れかけの三人の介抱は稀理絵の友人に任せ、大将と稀理絵がコンビニへ向かう。

 

稀理絵は学部内でも男子から人気を集めている女子だったから、大将は稀理絵と二人で並ぶだけでも緊張し、酔いも覚めてきていた。

 

「大将君は一人暮らしだったっけ?宅飲みとかよくする?」

コンビニに向かいながら、何気なく稀理絵は大将に話しかける。

 

「はい…じゃなくて、うん、一人暮らし。と言っても、マンションタイプの物件で周りには社会人も住んでて騒げないし、大学から遠いから宅飲みするなら友達の家が多い…かな。」

稀理絵は身長がそれほど高くないため、下から見上げるような目線でこちらを見てくる。

いわゆる上目遣いの状態に大将は心の臓が止まりそうだった。

 

稀理絵は大将の緊張をよそに話を続ける。

「なんとなく、大将君家ってすごくキレイにしてるイメージがある。キレイ目な服が多いし、私が出てる授業も全部ちゃんと出席してるから、そんなイメージ。」

 

嬉しいことを言われても表情に出さないようにして大将は誤魔化す。

「なにそれ、もしかして好印象?今度家見に来る?(笑)」

「え、そうだよ?家は見に行かないけど(笑)」

笑顔が本当に可愛くて、さりげなく嬉しい一言を言ってくるところが「ずるい」と大将は思った。

 

買い物を済ませ、稀理絵と二次会宅へ戻ったが、もはや梅酒も酎ハイもスナック菓子も必要なかった。

稀理絵の友人も3人を寝かしたあとすぐに横になったようだ。

4人を起こすのも可愛そうだったから、しばらく稀理絵と飲みながら待つことにした。

 

稀理絵が梅酒を飲みたいと言うので、男性宅のキッチンから手際よくグラスと氷を拝借して、あっという間に二人分のドリンクを作ってくれた。

大将は梅酒を好んで飲むことはなかったが、これをきっかけに梅酒が好きになった。

 

その日は結局、他のメンバーが目覚めることもなく、稀理絵と大将も朝まで2時間ほど寝て、それぞれが徒歩なりバスなり、学生らしく2日酔いで帰っていった。

 

大将が歩いて家に帰る途中、スマホに通知があった。

稀理絵からだ。

二次会を二人でしっぽりと楽しんでいるときに、稀理絵からLINEの交換を言い出してきたので、周りの4人に黙ってひっそりと交換していた。

 

その後、飲み会から数日経っても、稀理絵と大将のラインは続いた。

お互いのバイトや、大学の授業のこと、共通の知人なんかについて面白おかしく笑い合った。

 

ただ、1週間もラインが続けば、話題が切れるタイミングもある。

だから大将は話題が切れたタイミングで稀理絵を食事に誘った。

 

しかし、2日、3日と返事はなく、誘うタイミングを見誤ったと大将は思っていた…。

稀理絵から返事があったのは週明けの月曜日。

結果は意外にも「今週末空いてるよ~」と誘いをOKしてくれた。

行きたいお店があるか尋ねると、「イタリアンがいい」とのことだ。

 

 

12月の初旬、イタリアンレストランデートの当日を迎えた。

大将はお気に入りのレッドウィングブーツに足を入れ、家を出る。

 

待ち合わせたお店は、大学近くの学部生に人気があるレストラン。

料理の口コミが星3.5を超えているから、きっと期待できる。

 

約束していた19時の10分前に店に着くと、ちょうど稀理絵が現れた。

稀理絵は緊張しているのか、表情がどこかぎこちない。

 

あと1分でも遅かったら逆に待たせていたところだったので、大将はホッと一息をつき、レストランの戸を開けて、稀理絵を先に通す。

 

「いらっしゃいませ~!向池野?と…」

その声には、聞き覚えがあった。

「アウトドアキャンプ」サークルの二次会で宅飲み場所を提供してくれた大学の先輩、吉原がそこにはいた。

 

ひとまず席に座って落ち着こうとしたが、予期していなかった展開に戸惑いを隠せない。

稀理絵も下を向いたままで顔をあげる気配がない。

 

吉原は能面のような無表情でメニューを持ってきた。

「本日はお席のみのご予約ですが、料理はいかがなさいますか」

わざとらしい敬語が、さらに大将を辱める。

 

少しでも早く吉原が離れていくように、即座にメニューを決め、飲み物だけ稀理絵に尋ねた。

「梅酒系のドリンクもあるけど何がいいかな?」

「うん、ありがとう。でも今日はウーロン茶で。」

 

週末の店内は混み合っていて、最初のオーダー以降、吉原がテーブルに来ることはなかった。

しかし、食事中に稀理絵の笑顔を見ることは一度もできなかった。

 

店を出てからも、稀理絵は一人先を歩き、大将とペースを合わせようとしない。

大将はその様子を察し、

「今日は解散しよっか?」

 

稀理絵は静かに頷き、小さな声で

「ごめんね。今度、埋め合わせするから。」

 

大将は今日のデートが悔しくて、次のデートにつながる言葉を口走る。

「イブの夜は予定なければ、時間もらえないかな?」

 

稀理絵は目の前にスケジュールがあるかのように空を見上げ、

「…たぶん大丈夫だったと思う。空けとくね。」

と言ってくれた。

 

そこまで話を終えると、

「じゃ、また近いうちに連絡する!」

とだけ伝えて、稀理絵を見送り、帰途についた。

 

 

Part 2

大将は「アウトドアキャンプ」の飲み会の日以降のことを回想していた。

稀理絵は誰にでも関係なく愛嬌を振りまく、いわゆる八方美人タイプの人間だ。

 

彼女を眺めながら部員と話をしていると、手元のハイボールがいつもより早いペースで底をついた。

人気者の稀理絵はカシスオレンジが入ったグラスを手に持ち、次々と会話をこなしていく。

 

その後、一次会が終わったので約束していたとおり、大将と稀理絵は宅飲みへと向かった。

だが、バイト終わりに飲み会に参加していたこともあって、大将は思いのほか酔いが回っていた。

面倒見がいい優しい誰かの肩をかりながら、大将は自宅へと向かっていたが、あの日のことは実はよく覚えていない。

 

飲み会から少し時間が経ち、レストランで稀理絵と会ったが終始うつむいていたことも気になる。

「あの飲み会」以降、「あのレストラン」以降、大将は稀理絵のことをずっと気にかけていた。

 

そして、クリスマスイブはやっぱり好きな人と過ごしたかった。

そんな想いから、クリスマスイブに会えないかと、LINEメッセージを稀理絵に送信していた。

 

 

Part 3

レストランの一件以来、気持ちの冷却期間が必要だと思い、大将は1週間ほど稀理絵へのLINEを控えていた。

そして、寒さが身に染みる12月24日、クリスマスイブはやってきた。

 

大学生のバイトがイブに休めるはずもなく、稀理絵も大将もイブはバイトだった。

稀理絵がバイトしている居酒屋は、大学近く、例の人気イタリアンレストランの近く、そして、まだ行ったことはない彼女の自宅の近くにあるらしい。

 

イブの夜はお互いがバイトだけど、バイトが終わったら稀理絵を家に呼んで、一緒にケーキを食べるつもりでいた。

大学は冬季休業中だから深夜から会うとしても、ゆっくりできるはずだ。

 

イブの18時頃、大将は稀理絵にLINEを送る。

「今日、寒いからあったかくして出かけてね!」

身体を気遣ったメッセージを送信し、忙しく人が行き交うホール業務へと入っていった。 

 

20時の休憩がやってきて、バックヤードでスマホを確認するが稀理絵からの返事はない。

「忙しくてスマホ見れてないのかな?」

返事がないので仕方なく、ホール業務に戻る。

 

クリスマスイブだけあって、お客さんからはシャンパンの注文、ちょっといいお肉、それに限定メニューの注文が相次ぐ。

 

バイト中に「彼女もひっきりなしに動いていて、会ったときは二人ともクタクタかもしれない」なんてことを考えながらも、バイトが終わって会えるのを楽しみにしていた。

 

22:30頃、バックヤードで他のバイトたちと話をしながら、早着替えで支度を済ませる。

「急いでるみたいだけど、これからどこかに行くの~?」

大将はバイト仲間にからかわれながら、適当に返事をしてバイト先をあとにした。

 

徒歩での帰り道。

「先にバイトあがったから、家に帰ってるね」

稀理絵はまだ大将からのラインを読んでいないようだったが、重ねてLINEを送っておいた。

 

帰りには「アウトドアキャンプ」二次会の買い出しで稀理絵が好きだと行っていたセブンのおでん、そして、クリスマスなので稀理絵が好きな梅酒も買っておく。

家の冷蔵庫のケーキと、クリスマスプレゼントと、稀理絵を迎え入れる準備は万端だった。

 

23時過ぎ、いつもなら彼女のバイト上がりの時間。

でも、LINEが既読になる気配はない。

 

その代わり、「何してるの、飲み行こうよ?」という友人からのメッセージ。

「ごめん、予定ある!」と返事をして、再びLINEの着信音が鳴るのを待ちながら、テレビをつけてみた。

 

クリスマスにちなんだサンタクロース風ミニワンピを来た女性たちが出演していて、男性がいかにも喜びそうな深夜枠の放送があっていた。

 

テレビに見入っていたら、いつも間にか24時前。

日付が変わるタイミングを一緒に迎えられなかったことを残念に思いつつ、時間も時間なので、

「バイト終わりだからさっとシャワー浴びてくるね!」

とLINEを送って、バスルームへ。

 

シャワーを浴びている時間に通知が来たら申し訳ないと思い、最短の時間で身体を洗い、脱衣所のバスタオルをとると、髪と手だけ拭いて、大将はスマホに手を伸ばした。

 

だけど、まだ通知はない。

髪を乾かし、化粧水をつけて、パジャマに着替えても通知はない。

 

時刻は深夜1時を過ぎた。

おでんが完全に冷め切っていて、練り物は汁をたくさん吸って、大将の気持ちと同じようにふやけていたかもしれない。

 

いろんな意味で「何かあったのか?」と思いはじめる。

「大丈夫?生きてる?」

とLINEを重ねる。

でも、やっぱり既読がつかない。

待っても待っても、LINEは既読さえつかず、時間が過ぎるばかり。

いつの間にか、大将はこたつの暖かさの中、寝落ちしていた…。

 

12月25日、午前11時頃、稀理絵からLINEがあった。

「昨日ごめんね。スマホがおかしくって、バイトも遅くなっちゃって。」

 

思うところはいろいろあったが、取り乱さないようにして、LINEを続けてみる。

「大変だったね!プレゼントも渡したいし、10分でもいいから会えないかな?」

 

小さな目の要求に、稀理絵からはどういう返事が来るか。

「ごめんね。今日、昼間は友達と約束してて、夜はバイトに入る予定。26日朝からは地元に帰省する予定だから、ちょっと厳しいかも。」

 

もっと前に気づいておくべきだった。

稀理絵は確かにきれいで、笑顔も可愛い女性だった。

だけど、実は男性との付き合いはそれほど多くはないらしく、一般的な女性の恋愛感とズレがあることに気づいた。

 

 

Part 4

稀理絵は男性に言い寄られることが多いが、実はあまり男性が好きではないし、コミュニケーションを取るのも得意ではない。

 

サークルの同期、吉原大将(ヨシハラヒロマサ)は、それほどタイプではなかったが、長い間彼氏がいなかったこともあって、なんとなく勢いで付き合ってしまったところがある。

それに、稀理絵は男性と安定して長く付き合ったことがないため、長期間の恋愛に苦手意識があったため、それを克服しようと自分なりに努力をしていた。

誰と付き合っても、少し時間が経ったら気持ちの不一致が出てきて、その対処方法が分からなくなってしまう。

付き合うたびに、毎回辛い思いをしていることに自分でも気づいていた。

 

あの日の飲み会も、吉原と言い合いになってケンカしたままで参加していた。

稀理絵自身は別れたつもりだったが、どうも吉原としては別れ方に納得がいっておらず、それを受け入れることができていないらしい。

だから、稀理絵はサークルの男性部員ともできるだけ話すようにしたし、吉原から先に誘われていた二次会には「みんなでなら行く」とだけ伝えていた。

 

サークルにはいろいろな男性部員がいたが、飲み会で話した向池野大将(ムケノタイショウ)だけは、どこか雰囲気が違っていた。

稀理絵は昔からそうだが、初めて会った時の印象で人の好き嫌いを決めてしまう節がある。

顔を見て、話してみて、大体の男性は30秒も経たないうちに拒絶してしまう(表面上の必要最低限の会話しかしない)が、向池野のゆったりとした雰囲気と謙虚さと端正な顔立ちは、稀理絵が気を許す数少ない男性だった。

だから気づいた時には、二次会に向池野も誘ってしまっていた。

 

向池野と二次会で話したことや、ラインで交わしたメッセージには、吉原には向けたことのない気持ちもあり、稀理絵は向池野をどんどん好きになっていることは自覚していた。

 

他方、吉原は所有欲が強く、あきらめが悪い。

稀理絵のスマホには、吉原からのLINEメッセージや電話が何度も鳴り響いた。

 

そんな時に、向池野から食事の誘いがある。

稀理絵は向池野に返事する気力がないほどに、吉原のしつこい連絡で消耗していたが、週明けに向池野の誘いに返事をした。

吉原がバイトしているイタリアンレストランに「他の男と来店すれば、吉原があきらめてくれる」と思ったからだった。

 

ただ、それは間違った方法だった。

いざ来店してみると、吉原は笑っていない目を稀理絵に視線を向けた。

1回目の接客以降、吉原がテーブルに姿を見せなかったのは、あえてのことだろうと分かっていた。

 

事情を何も知らない向池野が食事中も優しく話しかけてくれたが、「吉原を説得するために食事にきた」という真意が言えない以上、稀理絵は小さな返しをすることしかできなかった。

帰り道、「今度埋め合わせをする」と言ったことに対して、向池野がまさか「イブの時間空いてない?」だなんて聞いてくるとは思っていなかった。

だけど、失礼な理由でレストランの食事に来てしまったことに背徳感を感じていたのも事実で、つい、「空いてると思う」と返事をしてしまう。

 

稀理絵にとっては、これがクリスマスの予定を空けておくことの約束に変わるとは思いもせずに。

 

吉原からの連絡を放置していると、静かになったが、12月19日、一通のLINEの通知があった。

「クリスマスイブに会えないかな?謝りたいこともあるし、プレゼントだけでも受け取ってほしい。返事待ってる!」

稀理絵は「メッセージに既読をつけて」返事を考えることにした。

 

12月24日当日、付き合ってもいない、ちゃんとイブの約束もしていない向池野から連絡があった。

既読は付けず、バックグラウンドだけでバイト中にメッセージを読んでいく。

どうやら、向池野は本気で今日のバイト終わりに稀理絵と会うと思い込んでいるらしい。

 

だけど、別れ切れていないという見方をすれば関係が一応続いていたのは吉原だったし、プレゼントを用意してくれていることも考えると、この状況で向池野にだけ返事をすることはできなかった。

 

だから稀理絵は申し訳なさを感じつつ、二人を無視することにした。

稀理絵はバイトが終わると、家まで歩いて帰った。

 

帰り道に逡巡しつつ、「好き」と「申し訳ない」気持ちを整理できない自分にいらついた。

 

自分がしっかりしていれば吉原と別れることができていたし、向池野の食事の誘いにも「好き」な気持ちで応じていれば、今頃は、自分が理想とする恋愛関係を向池野と築けていたかもしれない。

そう思いながら、自宅アパートの前に着くと、そこには吉原が待っていた。

 

12時を過ぎようとしているのに、稀理絵のポケットの中ではスマートフォンの通知が鳴り響いていたが、稀理絵はスマホをマナーモードに切り替えて通知を見ることはしない。

もし、吉原がアパートの前で待っていなかったら、スマートフォンの通知を見て、イブを向池野と過ごしていたかもしれないし、ずっとそっちの方が幸せだったかもしれない。

どっちに転んでもおかしくないような考えをしている自分を変えたいと思いつつも、自宅のドアを開けて吉原を招き入れた。

 

それと同時に、吉原がプレゼントを渡してきたので、

「ありがとう、わたしも見せたいものがあるの。バイト終わりだから、シャワー浴びてくる。テレビでも見てて。」

サンタクロース風ミニワンピの女性が映ったので、稀理絵はチャンネルを変えた。

シャワーを浴びたあとに着ようと思っていたコスプレ衣装を、そのまま連想させるものだったからだ。

 

稀理絵はスマートフォンに溜まった通知を横目に、バスルームへ向かった。

もちろん、スマートフォンは壊れてなどいない。

 

 

解説

ちょっと無理やりしたが、大将は一人の人物かと思いきや、二人の大将が登場するというストーリー展開でした。

名前には、伏線を忍ばせていて、

向池野大将(むけ(ち)のたいしょう)は、「無下(そっけなくされる)の対象」「無知の代償」として最終的に裏切られてしまうことを示唆していました。

藍浦稀理絵(あいうらきりえ)は、稀理絵という名前が昭和的で違和感がありませんでしたか?これも実は「愛、裏切りへ」というメッセージが隠れていました。

 

ストーリーの発想自体は、乾くるみさんの「イニシエーションラブ」を参考にしてパラレルな恋愛模様を描いてみました。

Part 1は向池野の視点、Part 2は吉原の視点、Part 3は向池野の視点、Part 4は稀理絵の視点ということで、切り替えてストーリーを構成しています。

 

人間性を見ていくと、稀理絵は自分自身の恋愛感情を冷静に分析できないタイプ。

だから、最後に吉原と向池野に迷っていながらも、「吉原が家の前にいた(誘われた)」という事情に流され、それを恋愛感情として勘違いし、イブの夜を吉原に尽くそうと思ってしまいました。

そういう意味では、今回は吉原と向池野、どちらも裏切られた被害者であり、そこには本当の恋愛感情は存在しません。

 

最終的なストーリーの仕上げが荒かったので、稀理絵があまりよろしくない女性という受け取り方をした人もいると思いますが、このエッセイで伝えたかったのはそうではなくて、

女性はあと一歩のところで支えてあげないと揺れ動くから、男性は本当に心の蔵まで女性を分かってあげて、手を差し伸べてあげないといけないよ

ということです。

 

 

あとがき

皆さんは信頼できる相手とクリスマスを過ごせましたか?過ごせる予定ですか?

クリスマスってイルミネーションが、おいしい料理が、街の雰囲気が盛り上がりますよね。

でも、忘れてはいけないのがサンタさんのマインド。

プレゼント(贈ること)を通じて、自分のことよりも恋人に「give」することの方が遥かに大切だと、我々に教えてくれているのかもしれません。

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