都市部では副業(復業)が解禁され、一人で多数の収入源を得ることが当たり前になってきている昨今。
これまでは一人1業種が当たり前でしたが、ダブルワークや隙間時間でのフリーランス活動など、働き方が変わってきています。
2つ以上の仕事を持つと、考えなければならないことの一つに「税務申告」がありますが、みなさんはどの程度知識をお持ちでしょうか。
「税金」と言えば、最近ではチュートリアル徳井さんが税務申告をしていなかった(無申告)ことでも話題になりましたよね。
筆者は税務を専門で勉強したことはありませんが、総務の仕事上税務を取り扱った経験がありますので、簡単な税の話と恐ろしい税務申告漏れについて記事にしてみたいと思います。
「収入」と「所得」の違い
まず、ここはほとんどの人が理解していると思いますが、税法上、税引き前の会社から得られる給与や賞与のことを「収入」と言います。(源泉徴収前の金額)
「収入」から要件を満たす「控除」をしたものが「所得」です。(源泉徴収後の金額)
「いやもうこの辺で分からぬ…」
という人は、
「収入(税引前)と所得(税引後)って違うよね。」
というザックリした整理でいいと思います。
「年収」1,000万円なら「所得」は700~800万円が平均になります、配偶者や子供、親などの親族を「扶養控除」するかしないかで、「所得」は大きく上下します。
課税対象額が減ると、手取額が増える
大手企業の従業員が会席料理の接待などで領収書を切ってもらっている姿を見かけたことがありませんか?
お客様との会合であれば業務上必要な経費ということで、領収書を証拠にして残しているのです。
経費の申告により法人税に対する課税対象額を減らすことができれば、支払う税金が少なくて済みますので。
もちろん、お勤めの会社員にも「年末調整」や「確定所得申告」という税務申告のチャンスがあります。
法人では経費に当たる部分が会社員にとっては「扶養」や「保険料」の部分であり、これらを控除することにより、課税対象額となる所得を低くすることができるというわけです。
日本人の多くは、収入を増やすために必死で働くのに、税務申告は意外と真剣に考えない方が多いですよね。
筆者が総務の仕事をする中で、次のような例もありました。
年末調整時の申告漏れで毎年数十万円余計に納税していた人
数年前の話、筆者が年末調整の集計作業をしていると、やたらと字が荒いAさんがいました。
筆者は、見えづらい扶養控除申告書の書き直しをお願いしました。
再提出後、扶養控除申告書が名前以外空欄だったので、尋ねてみました。
筆 者「親御さんは同居されていて、収入はありますか?」
Aさん「数年前に退職して今は年金暮らし、一緒に住んで面倒みてるよ」
筆 者「扶養控除申告はなさらなくていいのですか?」
Aさん「何を申告するの?」
筆 者「ご両親が退職なさっているなら、収入によりますが、Aさんの扶養控除に入れられる可能性があります。ざっくり年間10万円くらい戻ってくるケースもあります。」
Aさん「そうなの?書き方教えてよ」
その結果、Aさんは前年に比べ、1年間で支払うべき税額が15万円ほど減り(そのまま手取り)ました。
親御さんが退職してから数年経っていたということですので、その年度に限らず、申告さえしていれば、毎年同額くらいの手取りがあったわけです。
非常にもったいない話です。
(修正申告すれば戻ってくるのかな?そこらへんは業務外なので、Aさんにおまかせしました。)
年末調整は確定申告に比べて非常に簡単ですが、家族間で見直しをしないとAさんのように見落とすこともあります。
近くに税に詳しい人がいると相談してみるといいですね。
Wワークは年末調整すればOK…なわけあるかい!
会社の社員・アルバイト・パートとして雇用されている職員は、原則として会社に源泉徴収義務がある(会社で所得税を天引きする)ため、年末調整によりほとんどの税計算が完了します。
では、Wワーク・Tワークの場合、2つの勤務先でそれぞれ年末調整を行えば税務申告は終わりでしょうか。
「そうじゃないの?」
という人は税務申告漏れの容疑がありますね…(笑)
単純な話でザックリと説明します。なお、以下すべて所得控除後で考えます。
太郎君は、A病院と、B弁当屋さんと、Cコンビニで働いていました。
平成30年のそれぞれの年間所得(所得控除後)が、A病院は180万円、B弁当屋さんが70万円、Cコンビニが90万円でした。
それぞれの勤務先で源泉徴収を受けていたので、A病院は年間180万円×所得税率5%=9万円、B弁当屋さんは70万円×所得税率5%=3.5万円、Cコンビニは90万円×所得税率5%=4.5万円の税金を支払う計算となっていました。
勤務先3つの所得税額の合計は、17万円。
この所得税額が多いのか少ないのか、次の計算を見れば誰でも分かるはずです。
さて、この3つの勤務先で稼いだものと同じ所得を、1つの勤務先で稼いだ場合はどうなるでしょう?
180万円(A病院)+70万円(B弁当屋さん)+90万円(Cコンビニ)=340万円です。
同じ金額なんだから税金も同じはずじゃ…。
いいえ、340万円×所得税率20%=68万円 となります。
計算方法の違いによって、68万円ー17万円=51万円の差が出ます。
こんな非合理的な差別が法律上許されるのでしょうか?
許されるはずありません(笑)
もうお気づきですね?
所得税は個人が稼いだ年間収入の総額に対して課税されます。
つまり、「3つの勤務先で稼ぎがあったなら、その収入の総額をまとめて申告しなさいよ」というのが、いわゆる確定所得申告のことなのです。
また、申告は前年分の収入を翌年2月頃に税務署へ届け出る必要があります(または電子申告)。
これを怠ると、所得税(未納分)、無申告加算税、延滞税を科されることになります。
おそろしや〜。
あとがき
いずれ、マイナンバー、税情報、銀行口座、クレジットカード情報が紐付けされ、税務申告さえ不要になる日もやってくるでしょう。
なぜならエストニアでは電子システムによる税務が「既に」行われています。
日本でもいずれあらゆる公共サービスが電子システム化されるでしょう。
人件費がもっともコストがかかりますから。
今更、税制度を事細かに勉強する必要はないと思います。
ただ「こういう理由があって課税される」「こういうときは控除ができる」といった税に関する基本事項については、これからの副業時代では必須の知識になっていくかもしれませんね。
それと、支払うべき税金を支払わないこと(脱税)は当然ながら犯罪です。
税金の計算が難しいなら、税理士に相談すればいいわけですし、そのお金が惜しいなら自分で勉強すればいいだけの話です。
今はネット上でなんでも無料で手に入る時代ですから、多少面倒でもその努力をしようとすることが大事です。
