「I LOVE…」は、2020年1月スタートのTBS系火曜ドラマ「恋はつづくよどこまでも」の主題歌となっていたOfficial髭男dismの楽曲です。
2020年7月現在でも人気があり、音楽ランキングの上位にランクインしています。
最近の髭男人気は凄まじく、音楽ランキングによってはTOP10を独占しているような感じで、若者からの支持がすごいことになっています。
この楽曲の歌詞については既にいろんな人が記事を書いていて、今さら記事にするか迷ったのですが、気になるフレーズを発見してしまったこともあり、筆者なりに歌詞の解釈を考えてみたいと思います。
また、この楽曲は作詞された藤原さん曰く、「恋人、友人、家族、ペット、同僚、性差を問わない関係などの“LOVE”」についての歌なんだそうです。
確かに、「LOVE」という文字の並びを見ると、つい恋愛関係を想像してしまいます。
しかし、「LOVE」には恋愛関係以外の愛の形もあるので、先入観を取り払って歌詞を見ていきたいと思います。
※記事に埋め込んだYouTubeを再生しても再生回数が増えない(髭男の応援にならない)ので、あえてYouTubeリンクは貼っていません。曲はYouTubeで検索していただければ幸いです。
画像出典:https://higedan.com/works/i-love/
I LOVE… タイトルの意味
歌詞に入っていく前に、このタイトルは特徴的なので、ちょっとここでワンクッション入れておきたいと思います。
日本人が作る楽曲の歌詞やタイトルで「LOVE」を含んでいるものを挙げてみましょう。
例えば、「Lovers」「Forever Love」など名詞で終わる形でシンプルなものもあれば、「I LOVE YOU」「Love so Sweet」などの一文で終わる言い回しもあります。
ところが「I LOVE…」の場合はどこかスッキリしていません。
なぜでしょう?
きっと大人よりも、中学生の方がその答えが早いかもしれませんね。
中学生で習う、Subject(主語)+Verb(述語)+Object(目的語)の形に当てはめたときにObject(目的語)が入っていないことが非スッキリの原因です。
つまり、この曲のタイトルから一つ言えることは、
I LOVE の後に続くのは「恋人」以外の可能性もある
ということです。
I LOVE… 歌詞のストーリーと概念
また、「I LOVE…」の歌詞をよく聴いたりしたことがない人は、「人々の形ある(目に見える)ストーリー≒具体性」ではなくて、「感情や葛藤(目に見えない)の概念≒抽象性」のことを考えながら歌詞を見聞きしてみてください。
なぜ歌詞の概念という、小難しいことを考えるのかと言うと、始めに触れた藤原さんの作曲意図「関係性に囚われない“LOVE”」という前提があるからです。
様々な関係性に当てはまる「LOVE」ということであれば、特定の人物やストーリーではなくて、いろいろな愛の形を集約したような“概念”のことを指しているはずです。(筆者がそう考えているだけですけど笑)
I LOVE… 歌詞の意味
前置きが長くなりましたが、ここまでの前提を踏まえながら、歌詞を細かく見ていきます。
最初に全体の歌詞がありますが「歌詞全部見たことある!」って人は、全体の歌詞はササーッとスクロールしてください。(あとで細かくブロック分けしています。)
僕が見つめる景色のその中に 君が入ってから 変わり果てた世界は
いつも卒なくこなした日々の真ん中 不思議な引力に逆らえず崩れてく
I Love なんて 言いかけてはやめて
I Love I Love 何度も
高まる愛の中 変わる心情の中 燦然と輝く姿は
まるで水槽の中に飛び込んで溶けた絵の具みたいな イレギュラー
独りじゃ何ひとつ気付けなかっただろう こんなに鮮やかな色彩に
普通の事だと とぼける君に言いかけた I Love その続きを贈らせて
見えないものを見て笑う君の事を 分かれない僕が居る
美しすぎて目が眩んでしまう
今も劣等感に縛られて生きている
I Love I Love 不格好な結び目
I Love I Love 手探りで見つけて
I Love Your Love 解いて 絡まって
僕は繰り返してる 何度も
レプリカばかりが飾られた銀河 カーテンで作られた暗闇
嘆く人も居ない 鼠色の街の中で I Love その証を抱き締めて
喜びも悲しみも句読点のない思いも
完全に分かち合うより 曖昧に悩みながらも 認め合えたなら
重なる愛の中 濁った感情の中 瞬きの僅かその合間に
君がくれたプレゼントはこの やけに優しい世界だ
イレギュラー
独りじゃ何一つ気付けなかっただろう こんなに大切な光に
普通の事だと とぼける君に言いかけた I Love その続きを贈らせて
受け取り合う僕ら 名前もない夜が更けていく
歌手:Official髭男dism
作詞:藤原聡
作曲:藤原聡
さて、ここからはブロック毎に分けて、見ていきます。
僕が見つめる景色のその中に 君が入ってから 変わり果てた世界は
いつも卒なくこなした日々の真ん中 不思議な引力に逆らえず崩れてく
「I LOVE…」の歌詞に登場する存在は僕と君だけです。
僕の一人称の視点から、君を見つめている、そんな世界観から始まります。
また、このときの「景色」は、無色透明あるいはモノクロでイメージしておくといいです。
僕だけの淡々とした色のない世界、そこに君が現れてから惹(引)かれていくようなイメージが掻き立てられます。
I Love なんて 言いかけてはやめて
I Love I Love 何度も
I Loveの続きが言えない、それを躊躇するものの、繰り返してしまう僕は、君に対する一方的な感情を持っているようです。
高まる愛の中 変わる心情の中 燦然と輝く姿は
まるで水槽の中に飛び込んで溶けた絵の具みたいな イレギュラー
ここでは燦然と輝く姿は君のことを言っていますが、「燦然」はふつう星や宝石に使います。
このあとの歌詞で「銀河」という表現が出てくることから、星のようにキラキラ輝く君の存在感を遠回しにベタ褒めしているのでしょう。
そして、「水槽の中に飛び込んで溶けた絵の具みたいなイレギュラー」という表現は君の存在感とリンクしているので、水槽の中でもひときわ目立ってしまう色が君のことだとわかります。
※CDジャケットも水槽に溶けた絵の具みたいですよね。
はじめに、僕の”景色”が「無色透明あるいはモノクロのイメージ」と言っておいたのは、君が特別な色や輝きを放つ、対称的な存在だからです。
余談ですが…藤原さんが作る歌詞って、いろいろ飛び込みがちな気が…コーヒーに飛び込んだり水槽に飛び込んだり(親しみを込めて言ってます笑)
独りじゃ何ひとつ気付けなかっただろう こんなに鮮やかな色彩に
普通の事だと とぼける君に言いかけた I Love その続きを贈らせて
気付けなかっただろうということは、裏を返せば、何かに気づいたということ。
星や絵の具の”色”が君だったと考えれば、一つの色だけでは色彩とは言い難いので、君(あるいは僕も含め)を取り巻く環境(色を持つ素敵な周囲の存在)に気づけたということかもしれません。
見えないものを見て笑う君の事を 分かれない僕が居る
美しすぎて目が眩んでしまう 今も劣等感に縛られて生きている
I Love I Love 不格好な結び目
I Love I Love 手探りで見つけて
I Love Your Love 解いて 絡まって
僕は繰り返してる 何度も
見えるけど見えないもの、それは”友情”だと決まっています(遊戯王ならね笑)
話を戻して、ここで言う「見えないもの」は、僕が少し不器用なばかりに察することができない君の想いのことではないでしょうか。
と言うのも、その後に続く歌詞、「不格好な結び目」や「Your Love」は、どうやら君も僕のことが気になる存在だと暗に示しているからです。
レプリカばかりが飾られた銀河 カーテンで作られた暗闇
嘆く人も居ない 鼠色の街の中で I Love その証を抱き締めて
この部分は、君がいないときの僕の想い(寂しさ)を表現しているのかもしれません。
銀河には、星(君)がいなくて、レプリカ(他の存在)しかいない。
カーテンで作られた暗闇、部屋の中で僕は独り、嘆く人(君)もいない。
鼠色(色がない=君がいない)の世界。
喜びも悲しみも句読点のない思いも
完全に分かち合うより 曖昧に悩みながらも 認め合えたなら
さて、筆者が気になったフレーズというのが、実はココです。
「コーヒーとシロップ」の歌詞で、句読点を入れたり入れなかったりすることで、歌詞に変化をつけているところが前から気になっていたんです。
もちろん、直接的な回答ではありませんが、このフレーズによって、藤原さんは「句読点のない思い」を次のような意味で使っているということが推測できました。
・喜びや悲しみと同じレベルで並ぶ感情
・分かち合える感情
・悩める感情
もちろん、正解はわかりませんが、筆者的には「句読点のない思い」は迷いや躊躇のことじゃないかな〜と。
それにしても、「完全に分かち合えなくてもいい」という心持ちはさすがの髭男らしさですよね。
重なる愛の中 濁った感情の中 瞬きの僅かその合間に
君がくれたプレゼントはこの やけに優しい世界だ
イレギュラー
独りじゃ何一つ気付けなかっただろう こんなに大切な光に
普通の事だと とぼける君に言いかけた I Love その続きを贈らせて
「不完全でもいいこと」をさらに強調するかのようなフレーズが続きます。
重なる愛と、濁った感情(劣等感)という、非なる二つの概念を並べ、「瞬きの僅かその合間に君がくれたプレゼント」とは。
ここは難しいのですが、愛の形がわかっていきた一方で、僕は君に対する劣等感も抱いています。
君への愛がある気持ちと、自分自身が抱く劣等感は別物的な。
ただ、そこにもバランスがとれた感情(優しい世界)があるというイメージ。
また、「こんなに鮮やかな色彩に」から「こんなに大切な光に」へと歌詞が置き換わっています。
ここでは不特定多数ではなく、一点(君)だけを見ている僕がいるということでしょう。
受け取り合う僕ら 名前もない夜が更けていく
受け取り合うのは間違いなく「愛」なのですが、その続きが難しいですね。
「名前もない夜が更けていく」とは一体何を表しているのか。
”世が更ける”は、夜が明けることと思いがちですが、実は夜が深まって深夜になるといった意味です。
一般的には、深夜から夜明けにかけて暗くなる一方で明るく光るものがあります。
夜空の星です。
つまり、夜が更けて(君と僕の関係性に時間をかけて)燦然と輝く星のように、君(=星=光)がよく見えるようになっていく、ということなのかもしれません。
以上、最後は、こじつけたような感じになりましたが、Official髭男dism「I LOVE…」の歌詞考察でした。
あとがき
ブラッディマンデイ、るろけん、世界から猫が消えたなら、亜人など、筆者は佐藤さんの演技は個人的に好きなので、「恋つづ」のドラマを見ようかと思いましたが、ちょっと時間がとれなくてドラマは見れませんでした。
その分、歌詞の解釈に深みがない点は申し訳ないです。
聞くところによると、ドSなドクターの役ということで、きっと佐藤さんは恋愛に不器用な男性役だったのだろうという想像しています。
ただ、髭男の楽曲がドラマの内容に全振りしているのかと言えば、そうではなくて、藤原さんがおっしゃるように「恋人、友人、家族、ペット、同僚、性差を問わない関係などの“LOVE”」を歌ったもののはずです。
概念的な部分でこの曲の歌詞をまとめると、
- 自分が「独り」の環境にいたけど、光となる「存在」ができた
- でも、すれちがって関係性を一時失ってしまうこともある
- 僕(自分)と君(相手)は完全に分かり合おうとする必要ないよ
- 時間をかけて(夜が更けて)お互いを分かりあっていこう
こういった感じではないでしょうか。
I LOVE…というタイトルで、恋愛だけにフォーカスしてしまいがちですが、誰が好きとか、恋とかだけではなくて、「感謝などの気持ちを贈り合ったり、お互いの違いを認め合うことも含めた愛の形」を綴った歌詞のように筆者は感じました。

